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自衛隊の闇 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って    著者:大島 千佳 評価:★★★★☆

 

自衛隊の闇: 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って

自衛隊の闇: 護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件の真実を追って

 

 

若い自衛官のいじめ自殺裁判で、重要証拠が隠蔽された。「自衛隊は嘘をついている」自衛官としての誇りを胸に証言台に立った男の軌跡!早稲田ジャーナリズム大賞受賞のドキュメンタリー、さらなる取材を追加し書籍化!

 

 

【この本の紹介】

 

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 この事件は04年に起きた現役自衛官の自殺、そして残した遺書に書かれたある上官への憎悪に満ちた言葉から始まった、遺族と国・自衛隊による自殺の原因を争った裁判の結果・そして関わった人たちのその後を描いた話となっています。

 遺族が勝訴を勝ち取るまでに行われた自衛隊・国による徹底的な隠蔽、その中で遺族側がどのような争点を用い、裁判が行われる中で起きた様々な事象を時系列で語られた本であり、自衛隊という組織の汚点や問題について語る本ではないことを予めご了承ください

 

 

 【本内に常に蔓延する後味の悪さと理不尽さ】

 この本を通して描かれるのは「自衛隊に蔓延する私的制裁の蔓延」「徹底的な隠蔽体質」、そして「正直者は馬鹿を見る」という理不尽にまみれた現実です。

 

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 このように国が関わる裁判ではもれなく裁判所もクソ化します。つまり徹底的に国に肩入れするわけです。

 亡くなったTさんに暴行を加えていた上官は、日常的にガスガンで部下を射撃してストレス解消、さらに恐喝でアダルトビデオをぼったくりで買わせるなどといったことを平然と行い、誰もそれを咎めるどころか公認、他の上司への相談、カウンセラー・相談窓口もすべて上官に筒抜けで役立たずで精神を追い詰められて自殺に至りますが、裁判側はこれらの事実を知った上で「ストレス解消で日常的な恐喝、あざになるほどの暴力を日常的にしていても自殺するなんて予想つかないからそれは罪に問わないわww」との判決を下します。サイコパスかな?

 とにかく本当に「お前は何をいっているんだ 」という展開が終始続きます。はっきりいって胸糞悪いです

 

 【総評】

 この書籍は文章もすっきりしており、字が詰め込まれた見づらい構成にもなっていないので、本の厚みに対してそんなに読むのに時間はかかりません。変な方向に話が展開したりもしないので、シンプルに読みやすい本だと思います。

 

 

【以下全体のネタバレ全開です:この本を読んで感じたこと】

 

 この裁判の結果、自衛隊側の隠蔽のすべてが裁かれたわけではなく、それどころか裁判の公認を得てしまった部分もあります。また遺族側のために隠蔽文書の存在を公表した3佐は懲戒免職は取り消されましたが、全方向からの圧力→希望異動敵わず左遷→飼い殺しという組織に仇名した裏切り者として処分されてしまいました。医療作品「白い巨塔」でも医療ミスを証明する証拠を出した若い医師や遺族に協力した医師を裏切り者として追いやられる場面があり、このような体質は自衛隊だけでなく組織というものには存在しうるものになります。

 

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 一応自衛官の自殺者数は年々減少傾向にありますが、やはり海外派遣や公務員=殺してもいいやつとすら扱われる日本ではストレスハイに晒されるため、自殺や鬱は避けては通れないようです。それに自衛隊に限らず、会社が作ったカウンセラーとかも「どうせ人事や上司に相談内容筒抜けで余計に状況がひどくなるだけだよ・・・」と利用しない人も多いと思います。形だけやられても何の意味もない。

 10年に起きた尖閣諸島中国漁船衝突事件においても与党による情報隠蔽、中国への配慮。その映像を海保職員がyoutubeに投稿し自体が発覚。しかしこの職員は処分を受けています。国家公務員は行政文書を許可なく公開することは違反になりますが、組織内・政府の動きを考えると、Tさんの死、3佐の勇気をもってしても組織は何も学習しなかったということでしょう。