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神戸大学院生リンチ殺人事件 警察はなぜ凶行を止めなかったのか 著者:黒木 昭雄  評価:★★★★★

 

神戸大学院生リンチ殺人事件―警察はなぜ凶行を止めなかったのか

神戸大学院生リンチ殺人事件―警察はなぜ凶行を止めなかったのか

 

  2002年3月4日未明、神戸市西区の団地敷地内で、当時27歳の神戸商船大学院生が、まったくの言いがかりから暴力団員たちに暴行を受け拉致される。通報で現場に駆けつけた警察官たちは、なぜか被害者を捜索せず、暴力団員に言われるがままに引き上げていく。

 その後延々と続いた凄惨な暴行の果てに、被害者は生命を絶たれたのだった。明らかな異状を目の前にしながら、警察はなぜ何もしなかったのか。納得できない被害者の母親は、やがて警察の責任を求めて国家賠償請求訴訟を起こした。そして2006年1月、最高裁によって警察の非が全面的に認められる。警察を相手取る国賠訴訟は決して勝てないと言われてきたが、それを覆す初めての画期的な判断だった。本書は元警察官の視点で事件を克明に検証し、その全容を明らかにするものである。

 

 

【この本の紹介】

 まず「神戸大学院生リンチ殺人事件」とは何か。2002年に神戸市において山口系暴力組の佐藤という男とその組員により大学院生がリンチに遭い殺された事件であり、国賠訴訟において警察側が敗訴となった稀有な例として有名な事件です。事件の詳しい内容は本書を読むか、特集したページがあるので検索してください。

 

 この書籍において触れられているのは事件の経緯。そしてこの事件において警察が犯し続けたミス・隠蔽の数々。その後国賠訴訟内において、弁護士側がどのように戦い、勝訴したかを描いています。

 前回の「沖方丁こち留」紹介記事の中で「神奈川県警とか不祥事のデパートといわれいますが、まだ不祥事がばれるだけ警察の中では透明な組織です」という宇多丸のシネマハスラー回で紹介された発言を挙げました。実はその後にもう一つ発言があり「地方警察ではこのような不正が横行している」という発言もありました。今回のはまさにそれです。

 「君らなんで警察官やってるの?もうそのバッジおいて封筒張りでもやってて。」といいたくなるくらいに警察の行動がひどいです。この書籍内において、警察として最低限の義務を果たした警察官は、遺族を支えた吉永警部くらいです。あとの警察官がやったのは

 ①犯人をみすみす取り逃がす

 ②数多くの通報を全力で無視

 ③現場周辺の捜索を一切やらない

 ④ヤクザにおべっかつかって警察官を全く動員しない

 ⑤パトカーに乗り込んで助けを求めた被害者を襲うヤクザにへこへこ

 

 あくまで上記は一部です。そしてこれだけのことをしても国賠訴訟では勝てないというのが恐ろしい世界。そら警察は王様になるわ・・・

 後半ではなぜ国賠訴訟で勝つのが難しいのか、またどうやって弁護士たちは勝てたのかというのことを順序たてて説明されています。そしてなぜ、遺族たちは勝率が一割にも満たない国賠訴訟にすべてをかけるしかないのかも怒りと疑念をこめて描かれています。