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本と映画の感想と雑記の記録

できるだけネタバレなしで本や映画の感想と評価をしていきます。あとおまけで雑記を・・・

七つの会議の紹介とネタバレ感想を語る  評価:★★★★☆

★★★★☆ 小説 社会問題 経済

トップセールスマンだったエリート課長・坂戸を“パワハラ”で社内委員会に訴えたのは、歳上の万年係長・八角だった―。いったい、坂戸と八角の間に何があったのか?パワハラ委員会での裁定、そして役員会が下した不可解な人事。急転する事態収束のため、役員会が指名したのは、万年二番手に甘んじてきた男、原島であった。どこにでもありそうな中堅メーカー・東京建電とその取引先を舞台に繰り広げられる生きるための戦い。だが、そこには誰も知らない秘密があった。筋書きのない会議がいま、始まる―。“働くこと”の意味に迫る、クライム・ノベル。

 

【この本の紹介】

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 この本の作者の池井戸さんといえば「ルーズヴェルトゲーム」「空飛ぶタイヤ」「下町ロケット」でおなじみの方であり、今回も企業のゴタゴタを扱った社会派作品です。

 

 ただ今回は中小企業の中でのゴタゴタであるため、大規模なスケールでもありませんし、難しい専門用語が出てくるわけでもありません。単巻完結であるため、この作者がどのような作品を書いているかを知るための導入の一冊としてお勧めします。上下作品が結構多い方なので。

 具体的にどのようなゴタゴタなのかはネタバレになるため語れませんが、社会派作品で有名な作者であるため、飛びぬけた話というわけでなく、大小あれど企業で働く人であれば、そんな瞬間があったのではないかという内容です。

 

 タイトルのとおり、この作品はメインとなる東京建電に関わる7人の視点からある一つの出来事を紐解いていく形式になります。複数視点作品の特徴というのは、主役一人の作品の場合、その主役の心象で他の人物が描かれますが、複数視点の場合は各個人の心理や事情が詳細に描かれるため、誰が正義で正しいか、何より誰がひどい目にあってもきついというものがあります。複数視点は見る人間の視点によって皆主役になるし、悪役にもなるのです。

 そのためすべての肩入れできるキャラというのがありません。受け入れられる部分もあるし、駄目な部分もある。そんなリアルで人間臭い人たちが描かれた作品です。

 

【胃がきりきりしてくる内容】

 作内では各セクターの管理職の人間の見下しあい、責任の押し付け合い、そしてかつて子供の頃に夢見た理想との差異、家庭でも必要とされないといった、胃がきりきりするような内容だらけとなっています。

 読んでいて決して明るい気持ちになれるものでもないし、スカッとするものでもありません。でもどんな職種・業種であれ会社の一部として働く立場のものとして、気持ちがわかってしまう作品だと思います。

 一つの物語として見るのでなく、今サラリーマンとして働いている自分を振り返る意味でも読むべき本だと思います。ほんと胃がキリキリしました・・・

 きっとこの作品は学生と会社員では登場人物に感じるものが全く異なるものになるでしょう。ただできるならば、そんな学生たちには登場人物の心情が理解できないまま立派になってほしいものです

 

 

 

【以下ネタバレ感想】

 

 

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 はい、ほんとうに胃がキリキリする内容でした。彼らの行ったことが糾弾されることであれど、そこにいたってしまったまでの重圧・葛藤、そして不正を行ってしまった後の自己弁護、言い訳・・・・何よりそんな不正をしてまで守ろうとした人生・家庭があのような形であるならば、彼らは何のためにそこまでしがみついたのでしょうか。

 不正までして会社のためにノルマを達成し、そこまでした新田や北川にあったものは冷め切った家庭と怒鳴り怒鳴られるだけの日々。一方新田に捨てられ会社を辞めた優衣は新たなやりがいとパートナーを見つけ、万年窓際係長で最後には不正を暴くために貧乏くじを引いた八角も理解してくれる妻と納得できる立場を持った。皮肉な話だと思います。

 ノルマにおわれるなかで「これごまかせば通るよな・・・」なんて悪魔の囁きがきてしまうことは働く以上多かれ少なかれあることです。でも思ってしまうことと実際にしてしまうことは全く別のことです。