ノンフィクションと評論書籍の感想を述べる

ノンフィクション・評論本に絞り実際に読んだ感想を述べていく

万引き老人  評価:★★★★☆

 

万引き老人

万引き老人

 
老後貧困、貧困老人といった言葉が流布する現代社会。高齢者世代の「困窮」は、万引きの現場に目を移すとその輪郭をハッキリと現す。万引きに走る原因は収入、貯蓄の不足、無収入といった金銭的な困窮はもちろんだが、孤独感や疎遠な家族関係といった心の寂しさ、肉体的な病気や心の病などの苦しみから物を盗む老人が急増している。捕まえて話を聞くと、それぞれが抱える身の上話に思わず同情することもあれば、あまりの身勝手さに怒りに打ち震えることも。凄腕万引きGメンが明かす老人万引き「現代ニッポン孤独な心」の現場リポート。

 

 

 

 前回は爽やかさやほろ苦さをにおわせる青春小説をレビューしましたが、今回はほろ苦さも爽やかさもない全く救われないルポタージュ本です。

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 これは保安員という、世間一般では万引きGメンといわれる万引き犯の発見・対処を外部委託された筆者が実際に確保した高齢万引き犯の実態を体験談で語っていくというものです。

 昨今高齢者による万引きが大きな問題になっています。それは貧困故に食べるものに困りというものもあれば、ホームレス生活が嫌なで衣食住が確保されている刑務所に行きたくて、比較的簡単に出来て罪悪感もない万引きを繰り返すといったものもあります。他人との繋がりを持ちたくて万引きする人もいるから世も末です。

 この本でもそれらのような万引き犯が何をどのような手口で盗んだのか、また犯行がばれた末にどのような行動をとったかということが解説されますが、それを読んだ感想としては「こいつら同情の余地かけらもわかねえ」です。やりなれた土下座、「警察に突き出すなんて、俺を飢え死にさせる気か!」と怒鳴り散らす、ぼけた振りをして責任能力を回避しようとする、うん、何が弱者だ

 警察も立場を持った人間の万引きであれば喜んで逮捕しますが、貧困層の小額万引きでは立件も難しく、処理も面倒なので厳重注意で終わらせます。万引き犯たちも警察に突き出されたところで大して罪に問われないことを知っているため何度でも繰り返されます。泥沼ですね

 バイトであれ接客・サービス業に携わった人間であれば、この本を読んで同情できる人は仏の心を持った方だと思います。

 この本はなぜ高齢者が万引きをするほど貧困になったとか、その裏に潜む社会の闇に触れた作品というわけではありません。解説本でなくノンフィクション本であるため「このようなことがフィクションでなく、当たり前のように横行している」という事実を知る意味では良い本だと思います。本当に犯行の動機や背景が十人十色です。

 ただ実体験がメインで、そこまでの動機や社会的問題についてはあまり触れられていなかったため、その辺りでマイナス1になってます。