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本と映画の感想と雑記の記録

できるだけネタバレなしで本や映画の感想と評価をしていきます。あとおまけで雑記を・・・

ジャンル:小説、恋愛・青春  また同じ夢を見ていた  評価:★★★★★

 

デビュー作にして25万部を超えるベストセラーとなった「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」の著者が贈る、待望の最新作。友達のいない少女、リストカットを繰り返す女子高生、アバズレと罵られる女、一人静かに余生を送る老婆。彼女たちの“幸せ”は、どこにあるのか。「やり直したい」ことがある、“今”がうまくいかない全ての人たちに送る物語。  

 

 まずこの作品、カテゴリーを入力する上でジャンルを何にしようか迷いました。恋愛といえるほど恋愛要素があるわけでなく、青春というのも何か違う、一応近しいジャンルということでこの恋愛・青春を入力したというくらいです。

 物語の始まりは小学生である主人公の女の子が、授業の課題で「幸せとは何か」について答えが出せず悩むところから始まります。そして幸せとは何かを出会っていく年上の人たちに問いながら、その答えを探していくといったものになります。

 読み終えた感想としては、非常に綺麗な物語です。本自体もページ数はそんなに多くないため、そこまで苦になりません。深く感想をいうとネタバレになってしまいますが、万人に勧めやすい物語だと思います。甘甘な恋愛物語というわけでなく、結構苦しいシーンもやってきます。もどかしさや主人公の無邪気な真っ直ぐさが読者にもぐさりとくることがあります。それは主人公が考えていることや行動が、読んでいる人たちにも心当たりがあるからかもしれません。

 それでも万人に勧められます。読むものに迷ったときや何から読もうかと考えたときは、この本をお勧めします。

 

 

 以下ネタバレ感想(既読の方だけ読んでください)

 

 読んだ方ならすでにわかられていると思いますが、登場する南さん、アバズレさん、おばあちゃんは本来の主人公の未来の姿です。物語途中で主人公は母と喧嘩し、そのまま謝れずに母は出張に行き、その先に飛行機事故で無くなります。その結果荒れて自暴自棄になった姿は南さん。だからこそ授業参観前で喧嘩した、というセリフで南さんは主人公が過去の自分だと気づきます。

 そしてアバズレさんは、クラスメイトと仲直りできず人間関係を捨ててしまった主人公の未来の姿です。主人公はきちんとクラスメイトに向き直り仲直りできたことで人間関係を捨てなかったために、アバズレさんは消滅しました。

 おばあちゃんは桐生君と仲直りできず恋人になれなかった未来の主人公でしょう。主人公はきちんと桐生君と仲直りし、プロポーズを受けたことで絵だけを受け取るに留まってしまったおばあちゃんの未来は存在しないことになりました。

 3人が消滅したのは、それぞれの未来を迎える可能性がなくなったからでしょう。両親と仲直りし、亡くならなかったことで南さんになる未来は消えた。ただしこの時点はまだクラスメイトとの関係は悪かったため、アバズレさんになる未来の可能性が残っており、アバズレさんは消えていません。

 しかしクラスメイトと仲直りしたことでアバズレさんとしての未来は消滅し、桐生君とも仲直りし、プロポーズを受ける未来が生まれたことでおばあちゃんになる未来も消え、誰でもない主人公として未来が生まれたということだと思います。

 ただそれぞれの登場人物が主人公の正体にすぐに気づけなかったように、これは南・アバズレ・おばあちゃんが意識的に過去を変えようと動いたわけではありません。おそらくどこか「あのときああしていれば・・・」「できるなら過去をやり直したい」という願いを猫のナナが導いたということになります。主人公と3人の出会いのきっかけはナナが原因であることを考えれば、腑におります。

 

 ただ誰にもならなかった主人公の未来が明るいものと確約されたわけではありません。それは主人公の未来を変えた3人は、主人公がこのままではどうなるかを知っていたからこそ、そうならないよう導けたからです。これが未来がどうなるかわからない人間の立場ではそうはいきません。自分自身の人生だからこそそれだけの言葉を言えるわけで、赤の他人なら見てみぬ振りをするでしょう。それは桐生君へのいじめを見てみぬふりをしたクラスメイトたちも暗示しています。

 また大人は的外れな助言やアドバイスをすることだってあります。それもまた物語中で語られていることです。また主人公が道を逸らそうとしたとき、それを導ける人は誰がいるでしょうか。桐生君や捨てなかった人間関係の中にそれだけの人があるばよいのですが。

 でもまあ、それでもこの主人公なら乗り越えられそうだと思えてしまうのはそれだけの成長と苦難を3人を通してしてきたからでしょうか。