ノンフィクションと評論書籍の感想を述べる

ノンフィクション・評論本に絞り実際に読んだ感想を述べていく

  心に狂いが生じるとき 精神科医の症例報告  岩波 明  評価:★★☆☆☆

 

心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告 (新潮文庫)

心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告 (新潮文庫)

 

 最初は心の小さな狂いでも、それをきっかけに、普通の人間が精神全体を蝕まれてしまうことがあり、ときには取り返しのつかない行動をとることがある。しかし、正常な精神と狂気の境目はごく淡く、我々の社会はアルコール依存、統合失調症人格障害うつ病など様々な精神疾患とともにある。人は、いつ、いかにして心を病むのか。現役の臨床医師が、虚説を排して実態を報告する。

 

【この本の紹介】

 まずこの書籍はサイコパスについて扱った本ではなく、ごく身近にある精神病について実例を交えて解説した本になります。精神病にいたる流れも特殊な事例ではなく、生きていく中で自分たちもなり得るのだろうと感じてしまうほどたくさん見られる人生例の一つでした。

 章としては

 1章:アルコール依存症患者

 2章:被害妄想

 3章:被害妄想からの殺人例

 4章:摂食障害

 5章:ADHD

 6章:器質性精神病

 7章:日本における精神鑑定の遅れ

 8章:日本におけるうつ病の遅れ

 9章:日本社会における精神病患者への風当たり

 

 おおまかに訳するとこのような感じになります。私自身としては、精神病の具体的な解説と原因、そしてそれに対する対処についてみたかったのですが、この本はあくまでその人がどのような経緯で精神病を発症し、その後どのような治療をしたかという実例を書き連ねたものが大半になります。詳しい解説を見たいという人にははずれになる本かもしれません。

 また9章になると政治思想というか、筆者の政治に対する感情的な意見が入ってくるため、それに嫌なものを感じる人もいると思います。自分もそんな一人でした。

 

 まとめとしては、実例を知るにはいいがそこから精神病と日本の社会構造や対策などを知りたい人には物足りない本となります。

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から 著者:藤岡淳子 評価:★★☆☆☆

 

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から

 

 

 

非行を対人関係における暴力という枠組みでとらえ、非行臨床の現場における実践と、米国における新たな非行理論による理解とを武器に、今、非行少年に社会としてどう働きかけるかを模索した書。

 

【この本の紹介】

 この本は少年犯罪・少年院に携わった著者が薬物・性犯罪・売春、暴行・殺人などの各ジャンルごとの少年犯罪を実際に関わった少年少女を実例に出し、そこから各内容を分析していくといったものになります。

 では大まかな感想についてですが「専門書としては役に立つが、楽しむための書物としては全くつまらない」ということです。上記にも記したようにこの本は実際に関わった実例を元に分析が行われます。また実例も一つだけでなく複数示されるため、分析が一方向に偏らないものになっています。実例が一つだけだとどうしても信憑性に欠ける部分が出てきてしまうのですが、その点は非常に優秀です。

 そして最終章では少年が非行に進む原因を生物学・精神学・社会学の各視点から分析され、その過程では他の研究者の研究も引用されているので、この本を元に他の研究内容を詳しく調べ、この本から派生させることも出来ます。最後には現在の非行少年に対する社会的措置と対処の効果の是非と改善点が挙げられます。

 まとめとしては、この分野を学びたい・研究しており詳しい文書・研究実績を把握したいという人とっては優秀な専門書です。でも読書として読むには内容が堅いですね

万引き老人  評価:★★★★☆

 

万引き老人

万引き老人

 
老後貧困、貧困老人といった言葉が流布する現代社会。高齢者世代の「困窮」は、万引きの現場に目を移すとその輪郭をハッキリと現す。万引きに走る原因は収入、貯蓄の不足、無収入といった金銭的な困窮はもちろんだが、孤独感や疎遠な家族関係といった心の寂しさ、肉体的な病気や心の病などの苦しみから物を盗む老人が急増している。捕まえて話を聞くと、それぞれが抱える身の上話に思わず同情することもあれば、あまりの身勝手さに怒りに打ち震えることも。凄腕万引きGメンが明かす老人万引き「現代ニッポン孤独な心」の現場リポート。

 

 

 

 前回は爽やかさやほろ苦さをにおわせる青春小説をレビューしましたが、今回はほろ苦さも爽やかさもない全く救われないルポタージュ本です。

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 これは保安員という、世間一般では万引きGメンといわれる万引き犯の発見・対処を外部委託された筆者が実際に確保した高齢万引き犯の実態を体験談で語っていくというものです。

 昨今高齢者による万引きが大きな問題になっています。それは貧困故に食べるものに困りというものもあれば、ホームレス生活が嫌なで衣食住が確保されている刑務所に行きたくて、比較的簡単に出来て罪悪感もない万引きを繰り返すといったものもあります。他人との繋がりを持ちたくて万引きする人もいるから世も末です。

 この本でもそれらのような万引き犯が何をどのような手口で盗んだのか、また犯行がばれた末にどのような行動をとったかということが解説されますが、それを読んだ感想としては「こいつら同情の余地かけらもわかねえ」です。やりなれた土下座、「警察に突き出すなんて、俺を飢え死にさせる気か!」と怒鳴り散らす、ぼけた振りをして責任能力を回避しようとする、うん、何が弱者だ

 警察も立場を持った人間の万引きであれば喜んで逮捕しますが、貧困層の小額万引きでは立件も難しく、処理も面倒なので厳重注意で終わらせます。万引き犯たちも警察に突き出されたところで大して罪に問われないことを知っているため何度でも繰り返されます。泥沼ですね

 バイトであれ接客・サービス業に携わった人間であれば、この本を読んで同情できる人は仏の心を持った方だと思います。

 この本はなぜ高齢者が万引きをするほど貧困になったとか、その裏に潜む社会の闇に触れた作品というわけではありません。解説本でなくノンフィクション本であるため「このようなことがフィクションでなく、当たり前のように横行している」という事実を知る意味では良い本だと思います。本当に犯行の動機や背景が十人十色です。

 ただ実体験がメインで、そこまでの動機や社会的問題についてはあまり触れられていなかったため、その辺りでマイナス1になってます。

女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち 著者:仁藤夢乃 評価:★☆☆☆☆

うちの子には関係ない」
「うちの孫がそんなことをするはずがない」
「うちの生徒は大丈夫」
「うちの地域は安全だ」
――そう思っている大人にこそ、読んでほしい。


◎ 本書概要

児童買春や犯罪の温床になるような仕事に就く少女について、
「特別な事情を抱えた子どもが働いている」とイメージする人は少なくないだろう。
しかし、今、家庭や学校に何らかの問題を抱えているわけでなく、
家族との仲も学校での成績もよく、将来の夢もあって受験を控えているような
「普通の」女子高生が、「JK リフレ」や「JK お散歩」の現場に入り込んできている。
「JK産業」で働く少女たちの身に何が起きているのか――。
子どもたちを取り巻く危険が大人の目に触れにくい時代、
私たちは何を考え、どう行動すべきか。
取材した少女たちの本音から、解決策を探る。


◎ 目 次

はじめに
【第1章】レナ・17歳――「JKお散歩」の日常
【第2章】サヤ・18歳――「JKリフレ」で働く理由
【第3章】リエ・16歳――売春に行き着くまで
【第4章】カオリ・18歳――社会に慣れるためのリハビリ
【第5章】アヤ・16歳――家庭と学校に居場所を失う
【第6章】表社会化する裏社会
【第7章】少女たちのその後
おわりに
【アンケート・インタビュー調査結果】

 

 「JK散歩」「JKリフレ」といわれるJKビジネスの世界で生きている女子高生たちに対し、なぜその世界に関わるようになっていったのか、そして今の自分にたいしどう思っているのかを取材していく形式となっています。

 【まさかの主観だらけの感想文】

 まずこの本を参考本や解説本として読もうとするのは辞めたほうがよいです。この本は第3者で描かれていますが、中立的に書かれてはおらず、非常に女子高生に肩入れした形で書かれています。そのため偏見も入っており結論ありきで書かれている部分も多く、論文というよりは感想文といった感じになっています。「風俗で働く女性は全員被害者!風俗に関わる男は全員悪!利用する男もクズ!」というのがひしひしと伝わってきます。

 【6章以降はいらない】

 また6章以降に関しても専門的な解説や統計もありません。アンケートも30人程度からしかとられていないものであるため、あまり参考にもなりません。最低でも1,000人規模でとってくれよ・・・

 「こんな世界で働くしかない女子高生かわいそう!だから皆で何とかしなければなりません!」で終わってます。いや、こっちが知りたいのはそこから先の具体的解決手段であったり、このJKビジネスがなぜ今になっても無くならないのか、それを構成する社会的要因や行政・民間の役割や動きを知りたかったのに、読まされたのは主観だらけの感想文・・・うん、それなら1~5章だけのルポタージュ本として出したほうがよかったと思います。

犬を殺すのは誰か ペット流通の闇 著者: 太田匡彦  評価:★★★☆☆

 

年間約8万匹の捨て犬が殺処分されている。その背景には、オークションを中心とする日本独特のペット流通がある。「売り時」を逃した犬を処分する業者と、ゴミのように回収する行政。アエラ記者が「命の衝動買い」のツケを告発する。

 

 前回の記事ではストーリー形式で話が進む「ペット殺処分」を紹介しました。

 

osusumehon.hatenadiary.jpこんk

 

今回は完全なノンフィクション。上記の本は殺処分を行う自治体職員に重きを置いていましたが、この本は殺処分の原因となるペット業界とその飼い主、そして国の政策と全体的に触れられています。以下の5章で紹介されています

 1章:利益のために犬を投売りするペット業界の世界とその仕組み

 2章:人気の幼歳犬を大量生産するために起きている弊害

 3章:実際に殺処分を行う自治体の声と数を減らす取り組み

 4章:ペット保護先進国ドイツの取り組み(ティアハイム・ベルリン)と日本の里親の現状と課題

 5章:動物愛語法改正の取り組み

 このようになっています。これはペット業界の闇を浅く広く触れた本だと思ってください。なので「あ、ここまでで終わるの?」という話もあります。それと2010年出版の本なので、古い情報も見受けられます(5章の愛護法改正は13年に施行されました)

改正動物愛護法~2013年9月1日より施行

 殺処分を行う自治体職員の感情やそこで起こっている現実を深く知りたいなら「ペット殺処分」まずペット殺処分問題を幅広く知りたいという方はこの「犬を殺すのは誰か」をお勧めします。ただある程度この問題を知っている人からすれば物足りたい本かもしれません。その意味では「入門書」といえます。この本を読んだ上でいいます。この本は入門書であり、この問題の闇はこんなものではありません

 すでに知っている情報が多かったため、評価は3としました。

ジャンル:教育・子育て・ノンフィクション  追いつめる親 「あなたのため」は呪いの言葉   評価:★★★★★

人間関係がうまくいかない、生きている実感がわかない、怒りがコントロールできない…そんな、満たされない感覚が常にあるのだとしたら、もしかしたらあなたも、被害者であり加害者なのかもしれない―「あなたのため」という親から子への依存の闇を照らす「親子救済」の書。

 

 【この本の評価】

 この本はスパルタ・詰め込み教育や虐待を取り扱った本となります。最初の章で実際に親からのいきすぎたスパルタ教育や教育虐待を受けた子どもたちがどうなってしまったかを紹介し、その後の章では親が陥りやすい教育方法や手段についてなぜそうなってしまうのか、またそれを防ぐ・対処するにはどうするべきなのかを解説しています。

 具体例を挙げますと「あなたのためだから」と勉強を強要する。子どもはあなたのためと言われてしまうと逃げ場が無くなってしまい追い詰められてしまう。親はいつの間にか自分の理想を子どもに投影してしまっており、親と子どもは別人であるということ。

 またテレビや本で「こうして私は東大に合格できました!」という成功談と方法を知ると、すぐにそれを子どもにも取り入れてしまう。だが忘れないで欲しいのは、そのように紹介される方法は「東大に合格した人は皆この方法を使っていた」ではなく「その方法を使って合格した人のみ紹介した」のです。つまりその方法でも落第した人はおり、その方法が正解ということはありません。教育に成功はない、親は自分が無力であることを自覚しなければならないということは作中でも語られています。

 この本を読んで多くの親や子どもは「あ、自分子どもこんなこと言ってしまった覚えがある・・」「あー自分よく親からこんなことネチネチ言われてたわ」と感じるでしょう。私もそう感じた一人です。親にとって「おまえのため」は最高の切り札なのです。この言葉を子どもにいえば暴力も虐待も犯罪すらも親の中で正当化されてしまいます。 

 ・・・とまあ、こんな個人的な思いを書いてしまうくらいにこの本には強いメッセージが込められてします。

 残念ながらこの本の内容は極論ではありません。どこの家庭にも起こりえてしまう事態なのです。子育てをしている親。これから結婚し子を持とうとする夫婦。こんな親に晒されている子どもたち。絶対にこの本を読んでください

 そして読んだ上で「こんなのありえないわーww」と感じたのなら、それは相当幸せな家庭に生まれたか、もうすでに手遅れとなっているかのどちらかです。後者がないことを祈りつつ、この感想を締めさせていただきます。

テーマ:ノンフィクション・宗教・社会派   スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪 評価:★★☆☆☆ 

 

2002年1月、アメリカ東部の新聞『ボストン・グローブ』の一面に全米を震撼させる記事が掲載された。地元ボストンの数十人もの神父による児童への性的虐待を、カトリック教会が組織ぐるみで隠蔽してきた衝撃のスキャンダル。1,000人以上が被害を受けたとされるその許されざる罪は、なぜ長年にわたって黙殺されてきたのか…。2003年ピューリッツァー賞(公益部門)受賞!

 

【この本の評価】

 今回はノンフィクション。アメリカでカトリック教が何十年にもわたり神父による少年への性的虐待とそれを隠蔽し続けたトップの体質を描いた本となります。

 まず内容についてですが「お前らどんだけ少年に手出すんだよ!!!」です。いや、性犯罪は再犯率が高いという話は聞いていましたが、それにしても手を出しまくりです。そしてそれを治療施設に送ってその後別の教会に野放しにするトップ。おおう、さすがかとりっk・・・これ以上は怖いのでやめます。

 この本は始めから終わりまでこの話一本で進みます。複数の神父の性犯罪の内容とその神父へのトップの隠蔽、そして大事になったあとの処分という流れです。そのせいか盛り上がりがなくて読んでて退屈になってきます。ずっと同じ展開しか続きませんので・・・

 同じように犯罪被害者と加害者の話を書いた「殺された側の論理」は読んでて感情が揺さぶられたんですが、この本は・・うーん、淡々と読んでました。この本は文章と展開がおもしろくありません。映画も出てるので、映画向きの作品なのかもしれません

 ※この作品は性的表現が多いので注意してください。