ノンフィクションと評論書籍の感想を述べる

ノンフィクション・評論本に絞り実際に読んだ感想を述べていく

騙されてたまるか 調査報道の裏側  著者:清水 潔  評価:★★★☆☆

 

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

 

 『桶川ストーカー殺人事件 遺言』『殺人犯はそこにいる』が話題沸騰中の著者・清水潔、待望の新作ノンフィクション!

国家に、警察に、マスコミに、もうこれ以上騙されてたまるか!
警察よりも先に犯人にたどり着き、その怠慢捜査を暴いた桶川ストーカー殺人事件。冤罪と〝真犯人〟の可能性を示唆した足利事件。いずれも社会を大きく動かした調査報道である。
この2つの報道で名を馳せた一匹狼の事件記者が、〝真実〟に迫るプロセスを初めて明かす。
白熱の逃亡犯追跡、殺人犯との直接対決、執念のハイジャック事件取材、〝三億円事件犯〟や〝時効〟との闘い、記者クラブの妨害など、写真週刊誌「FOCUS」時代から、30年以上の取材経験を余すところなく盛り込んだ、手に汗握るドキュメント。
凄絶な現場で格闘しながらつかんだ、真偽を見極める力とは? 誰のための、何のための報道か――その原点を問う、記者人生の集大成!

【目次より】
第一章  騙されてたまるか――強殺犯ブラジル追跡
第二章  歪められた真実――桶川ストーカー殺人事件
第三章  調査報道というスタイル
第四章  おかしいものは、おかしい――足利事件
第五章  調査報道はなぜ必要か
第六章  現場は思考を超越する――函館ハイジャック事件
第七章 「小さな声」を聞け――群馬パソコンデータ消失事件
第八章 〝裏取り〟が生命線――〝三億円事件犯〟取材
第九章  謎を解く――北朝鮮拉致事件
第十章  誰がために時効はあるのか――野に放たれる殺人犯
第十一章 直当たり――北海道図書館職員殺人事件
第十二章 命すら奪う発表報道――太平洋戦争

 

 

【この本の紹介】

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 この著者は記者クラブに所属するような大手新聞社記者でなく、新潮社出版の写真週刊誌「FOCUS」に所属したジャーナリストになります。そのため警察の動きとは異なる独自の捜査と証拠で事件の真相を探っていった人になります。

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 有名なところでは「桶川ストーカー殺人事件」です。これは殺された被害者が警察への相談をすべて無視し、全く対処せず被害者を見殺しにしたばかりか、記者クラブに被害者が水商売をしていて殺されても仕方ない人間だったと報道させ、被害届の提出などを行った事実を隠蔽・改ざんした有名な警察大不祥事をスクープした人になります。この本ではストーカー殺人事件をどのように暴いたか、またそれ以外にも関わった殺人事件を追った記録なども書かれています。

 

【筆者主体文章ゆえの欠点】

 この本は別の誰かの証言や事件の顛末などを第三者として追ったわけでなく、筆者自身の体験談に近い本になっています。そのため文章全体が一人称視点で書かれており、具体的なデータ、図などが出てこないためなかなか文章をイメージしづらいものとなっています。

 加えて主体であるが故にときどき文章が暴走している箇所があり、「いや、あんたその文章の前後繋がらないんだけど、問題はそこじゃないだろ」という章がいくつかあります。

 具体的には10章の時効を扱った殺人事件の中である大手新聞社が捜査状況を全国紙でリークしてしまったせいで、自供を引き出せるまで追い詰めていた犯人を逮捕することが出来なくなってしまった、という話が書かれています。そのせいで容疑者が殺意を否認→傷害致死はその時点で時効を迎えていてあてはめれない→殺意を証明できず殺人罪が当てはまらず無罪→時効なんてクソだ!と筆者はなったと語っていますが、いや、それよりリークしやがった大手新聞社に触れろよ、問題そこだろと。そこには恐ろしいくらい全く触れられてないです。第5章でこのようなスクープ、「エゴスクープ」について軽く触れられますが、ほんと軽く触れる程度です。

 またふれられている事件は大きく3つにわけて①殺人事件 ②ハイジャック ③北朝鮮拉致の3つとなっていますが、①以外は文章全体がふわっとしてます。読んでても「え、うーん。それくらいならわざわざ言われなくても・・」というような、殺人事件を扱った章では核心に触れることもありましたが、それ以外がそこらで報道されてるレベルしか触れられていません

 

【総評】

 章によって当たりはずれの差がひどすぎる、といったのが読んだ感想です。無理して全章読まなくても、好きな章だけ読めばいいと思います。 

妄信 相模原障害者殺傷事件  著者:朝日新聞取材班 評価:★★★☆☆

 

妄信 相模原障害者殺傷事件

妄信 相模原障害者殺傷事件

 

 死者19人、重軽傷者27人を出した
平成以降、最悪の殺傷事件はなぜ起きたのか──。
朝日新聞」連載・記事を加筆、再構成し書籍化。
数々の証言から容疑者の特異な行動や思考の背景を検証するとともに、
社会に根強く残る障害者への差別意識についても報告。

 

 

【この本の紹介】

「相模原事件」の画像検索結果

 

 

 

 平成28年7月26日に神奈川県立の知的障害者福祉施設津久井やまゆり園」にて元職員により19人殺傷、26人に怪我を負わせた平成大事件の一つである。

 この本は被害者遺族や元職員、そして加害者に取材を行ったものを本にしたものである。内容としては以下のようになっています

 

1章:加害者が事件を起こすまでの人生

2章:事件に巻き込まれた被害者・被害者家族のそれまでの人生とその後

3章:加害者の責任能力の分析

4章:加害者に対して行われた治療の不備、そしてその後の行政の対応

5章:事件発生後のやまゆり園の建て替え問題

6章:あ、これ朝日新聞出版だと感じさせられた章

7章:現場で働く職員の現実と悲鳴

8章:障がいをもった家族をもつ人たちの想い

9章:障がい者福祉のこれまでの経緯とこれから

10章:対談とその後のやまゆり園でおきたこと

補章:被害者の名を伏せるべきか、公開するべきか

 

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  このようになっています。この本はあくまで相模原事件に巻き込まれた人、関わった人たちのそれまでと受けた影響を取材したものがメインであり、この事件が起きた社会的背景や分析といったものがメインではありません。

 そのためこの本は「相模原事件の表から陰までを知りたい」という人向けです。加害者の異常性ばかりが報道された事件でしたが、この事件のその後まではどこの局も興味ないとばかりに見向きもしなかったからです。こうみるとほとんどのニュースもワイドショーと大差ないものになってるなとも感じました。

【印象に残った話】

「相模原事件 マスコミ 献花」の画像検索結果

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 この話で印象に・・・というより胸糞悪かった話というのが、マスコミの被害者遺族に対するストーカー、待ち伏せ、プライバシーの詮索という「なんでこいつら被害者遺族に袋叩きにされずに済んだんだ?」というようなことをしています。

 具体的には遺族は身内に障がい者がいたことを世間に知られたくないという人も多く、警察もそれを尊重して被害者の実名の公表を控えました。しかしマスコミにとっては取材対象の情報が無いという事態。そこで現場に献花をしにきた遺族を待ち伏せ多数のマスコミで遺族を囲んで逃げられないようにして情報を引きずり出すという手法。また事件周辺で「あなたの周りで亡くなった障がい者はいませんか?」「そんな人知りませんか?」と聞き込み。中には激怒して泣き叫ぶ人もいたそうで、むしろその程度でよく済んだなというゴミっぷり。筆者も悩みながら取材を続けたと書いてますが、「ああ、悩む程度の理性はまだ残ってたんだ」と感じました。

殺処分ゼロの理由  熊本方式と呼ばれて 著者:松田光太郎  評価:★★★☆☆

 

殺処分ゼロの理由―熊本方式と呼ばれて

殺処分ゼロの理由―熊本方式と呼ばれて

 

 

 

 

熊本市動物愛護センターについて】

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 最近だと「志村どうぶつ園」で目にする人もいるであろう「動物保護管理施設」。捨てられたペットや保護された野良動物を里親に譲渡できるよう治療
・教育するところとなります。保護も兼ねたペットカフェなども類似施設となります。
この本で取り上げられた「熊本市動物愛護センター」もそんな施設の一つ。「殺処分0」を達成した施設として話題になったこともあり、知っている人もいると思います。
一方で「他の自治体に持ち込まれる数が増えただけ」「持ち込むかわりに捨てる人が増えた」と批判の声があるのも事実ですが、ここでは割愛します。

 

【この本の紹介】

 

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 それでは熊本市動物愛護センターについて触れたところで、この本は熊本市動物愛護センターが熊本方式と呼ばれるまでに起こったきっかけや経緯、そして熊本方式だけでなく地域全体で行っている野良猫保護活動(管理活動?)をスタッフの一人として関わった獣医師の視点から触れています。

 前にペット流通の闇という本の感想を書きましたが、あちらはペット業界と制度について触れた本で、こちらは捨てペットの保護活動について触れた本です。

 

osusumehon.hatenadiary.jp

 

 ただし本全体で200ページ未満の文庫サイズであるため、それぞれの要素は浅く触れられる程度です。具体的な以下のようになっています

1章:一動物管理センターだった熊本動物管理センターが、殺処分0施設に向かっていくきっかけとなった経緯

2章:殺処分0施設になるために始めていったこと

3章:官民一体で殺処分0を目指していく流れ

4章:地域における野良猫保護活動

5章:水面下での活動

6章:口蹄疫など、獣医師からみる社会的事件

 

 熊本の施設について触れているのは1~3章がメインとなるので、もっと詳しく知りたい方は別の本をお勧めします。というよりこの本のタイトルだったら、熊本の動物管理センターがメインだと思ってしまうんですけど・・・・実際は半分程度で、殺処分0に関わったスタッフの様々な活動記録としての要素が強い本です。

 

 【この本で印象に残った話】

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 これだけではなんなので、この本で印象に残った話を。第1章で殺処分0を目指す経緯として書かれていた話ですが、このような管理センターでは、定期的な保護動物の譲渡会が行われています。もちろん熊本でも譲渡会を行い、無事里親が決まっていく中で職員たちは喜びに満ちていました。

 しかしその光景は徐々にペットを求めるオークションのような異様な雰囲気を持つようになっていき、ついには「去年も増えたペットの引取り先でお世話になりました。今年も宜しくお願いします」という、増えたペットの処分先として利用する人間さえ出てきて、これでは本末転倒じゃないか!というのが2章へのきっかけだったと語られています。

 動物愛護団体の理論として「このような施設があるから簡単にペットを捨てる人が増えるんだ」と批判するものがありますが、それを象徴する事件となっています。いや、そんな脳みそで動物飼うやつが100%悪いんですけどね。こんなん包丁で人が死んだから鍛冶屋を逮捕しろというのと同じ理論ですからね。

 

 浅く広くな本なのて、深い問題や制度の不備については触れていません。そちらが見たいなら「犬を殺すのは誰か、ペット流通の闇」のほうがいいです。

考える方法 著者:池内 了 その他   評価:★★☆☆☆

 

 世の中には、言葉で表現できないことや明確に答えられない問題がたくさんある。簡単に結論に飛びつかないために、考える達人たちが、物事を解きほぐすことの豊かさを伝える

 

 

【この本の紹介】

 中学生からの大学講義ということを謳っているとおり、特定の分野に深くまで掘り下げたものではなく、様々な「考える」というテーマを浅く入門的に触れたものになります。触れられているテーマは以下のとおりになります

 1.<私>が存在することの意味

   →考えるということを哲学的に考える<哲学>

 2.それは本当に「科学」なの?

   →科学と疑似科学の違いを考察する<科学論>

 3.アメリカン・インディアンは何を考えていたのか

   →アメリカ大陸の自然・文化から人間の文化を考える<文化人類学

 4.なぜ、人を殺してはいけないのか

   →人を殺しては駄目という価値観と死刑制度の差異をカントを交えて考察<犯罪論>

 5.ジェンダー研究のすすめ

   →そもそもジェンダー論って何?というところから<ジェンダー学>

 6.社会とはなんだろう

   →社会というものを色んな点から読み解く<社会学

 7.言葉について

   →言葉を通じて人間と社会を読み解く<社会学

 

 おおよそこんな感じです。それぞれのテーマを2~30ページ程度でまとめているため、ほんとうに入門の中の入門的部分で締められます。あまり専門用語も出てきません。

【評論・社会学が初めてという人向け】

 そのため「社会学の本ってどんな感じなの?」という本をあまり読まない人が入門として読む導入本としてならおすすめですが、それ以外だと物足りないです。それと複数の作者の合同本であるため、どうしてもテーマや作者によって合う合わないが出てきます。自分が科学と疑似科学の違いがおもしろかったです。ちなみに擬似科学というのは「マイナスイオン」「水素水」のような、一見科学的根拠があるように見えて、その実全く根拠の無いもののことを指しています。それを見分けることについて触れたのが2章です。ただ全体として合わないのが多かったかなあ・・・

警察はなぜ堕落したのか  著者:黒木昭夫 評価:★★☆☆☆

 

警察はなぜ堕落したのか

警察はなぜ堕落したのか

 

 桶川ストーカー事件から栃木のリンチ殺人事件まで、相次ぐ警察の失態によって、何人もの死者が出てしまった。いずれも、警察の怠慢、住民の訴えへの無関心が原因だ。「キャリアの経歴にキズをつけてはいけない」という恐るべき独善的な論理、現場感覚を無視した官僚主義など、元警察庁巡査部長が事件の背後にある堕落の構造を解明する。

 

 【この本紹介】

  今回の本は元警察官であった著者が、栃木リンチ殺人事件や長野警察官拳銃不正使用事件などを例に出し、それらの事件の発生から逮捕まで警察がどのような思惑で何をしたかを時系列で説明し、後半では警察時代の実体験を踏まえ警察の組織構造や制度の問題点を解説していくといったものとなります。

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  栃木リンチや京都小学生殺人事件など、事件の中でもとりわけ警察のお粗末な捜査が目立った事件を取り上げていることもあり、読んでいて胸糞悪くなるほどの対応だらけです。いくら家族が訴えても無視、あげく家族に証拠を集めさせその証拠も無視。とどめにリンチ監禁容疑の家に警察と名乗って電話、その結果警察に感づかれたと恐れた犯人による被害者口封じ殺人とか笑えません。

 ただしそれぞれの事件について30ページ程度でまとめられているため、事件について詳しく知りたいという方は、それぞれの事件を詳しく取り扱った同著者の本を読んだがよいと思います

 

 

栃木リンチ殺人事件―警察はなぜ動かなかったのか

栃木リンチ殺人事件―警察はなぜ動かなかったのか

 

 

 【主観的な文章が強い?】

「黒木昭雄」の画像検索結果

 後半からは著者の実体験を踏まえた警察の昇進制度の問題点や新人警察官がどのように洗脳され不祥事のデパートの従業員になっていくかを語っています。

 後半の感想を語る前に著者がなぜ元警察官になったかを語る必要があります。著者は警察官として従事する中で同僚上司による嫌がらせにより暴力警察官として認定され左遷。その後趣味の合う同僚警察官たちとつくったヨットのマリンクラブを巡り上層部から圧力・監禁・尾行をかけられ、我慢の限界に達し退職といったものです。

 

 そのため本人は警察官であった時代は誇りであった、と語っていますが、どう読んでも文章のそこらじゅうから恨みや憎悪が感じられます。元警察官ということもあり、警察に関する文章が主観的になっていることも感情が感じられる起因になっています。

「警察 昇進」の画像検索結果

 そのため昇任制度で問題としている「昇進するには現場実績でなくペーパーテストの結果しか考慮されない」ことを取り上げ、そのようにペーパーテストばかりやっている警察官を「頭デッカチのモヤシ捜査官」と卑下しています。

 また新人教育の中で身辺調査の中で恋人のことを記載しなかったために警察学校を辞めさせられた同僚について異常な不適格人の洗い出しと批判していますが、その後の「仮採用であっても警察官である以上、何か起こせば元警察官といわれるんだ・・」と教官が話していることからもわかるとおり、そら書かないといかんだろと。

 警察の知り合いから情報聞き出して犯罪に利用する、またその知り合いにわざと嘘の情報流して捜査をかく乱するといったことは十分予想されます。そんな映画もあったなあ・・

 

 確かに警察組織の腐敗構造の原因を知るにはいい著書なんですが、いかんせん感情が見え隠れしているのがマイナスです。でも一番の闇はこの人、原因不明の自殺を遂げているという・・・

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ブログとして方向性の転換を決定しました

 これまでこのブログではジャンルを問わず書籍・映画を紹介してきました。しかしあまりにもジャンルを選ばなかったためカテゴリがごちゃごちゃしていたことや、方向性がないため記事を作りにくかったことがありました。

 そのためノンフィクション・評論の書籍に絞って今後は解説します。そのジャンルの過去記事は残しますが、それ以外のジャンル・映画はすべて消去しました。

神戸大学院生リンチ殺人事件 警察はなぜ凶行を止めなかったのか 著者:黒木 昭雄  評価:★★★★★

 

神戸大学院生リンチ殺人事件―警察はなぜ凶行を止めなかったのか

神戸大学院生リンチ殺人事件―警察はなぜ凶行を止めなかったのか

 

  2002年3月4日未明、神戸市西区の団地敷地内で、当時27歳の神戸商船大学院生が、まったくの言いがかりから暴力団員たちに暴行を受け拉致される。通報で現場に駆けつけた警察官たちは、なぜか被害者を捜索せず、暴力団員に言われるがままに引き上げていく。

 その後延々と続いた凄惨な暴行の果てに、被害者は生命を絶たれたのだった。明らかな異状を目の前にしながら、警察はなぜ何もしなかったのか。納得できない被害者の母親は、やがて警察の責任を求めて国家賠償請求訴訟を起こした。そして2006年1月、最高裁によって警察の非が全面的に認められる。警察を相手取る国賠訴訟は決して勝てないと言われてきたが、それを覆す初めての画期的な判断だった。本書は元警察官の視点で事件を克明に検証し、その全容を明らかにするものである。

 

 

【この本の紹介】

 まず「神戸大学院生リンチ殺人事件」とは何か。2002年に神戸市において山口系暴力組の佐藤という男とその組員により大学院生がリンチに遭い殺された事件であり、国賠訴訟において警察側が敗訴となった稀有な例として有名な事件です。事件の詳しい内容は本書を読むか、特集したページがあるので検索してください。

 

 この書籍において触れられているのは事件の経緯。そしてこの事件において警察が犯し続けたミス・隠蔽の数々。その後国賠訴訟内において、弁護士側がどのように戦い、勝訴したかを描いています。

 前回の「沖方丁こち留」紹介記事の中で「神奈川県警とか不祥事のデパートといわれいますが、まだ不祥事がばれるだけ警察の中では透明な組織です」という宇多丸のシネマハスラー回で紹介された発言を挙げました。実はその後にもう一つ発言があり「地方警察ではこのような不正が横行している」という発言もありました。今回のはまさにそれです。

 「君らなんで警察官やってるの?もうそのバッジおいて封筒張りでもやってて。」といいたくなるくらいに警察の行動がひどいです。この書籍内において、警察として最低限の義務を果たした警察官は、遺族を支えた吉永警部くらいです。あとの警察官がやったのは

 ①犯人をみすみす取り逃がす

 ②数多くの通報を全力で無視

 ③現場周辺の捜索を一切やらない

 ④ヤクザにおべっかつかって警察官を全く動員しない

 ⑤パトカーに乗り込んで助けを求めた被害者を襲うヤクザにへこへこ

 

 あくまで上記は一部です。そしてこれだけのことをしても国賠訴訟では勝てないというのが恐ろしい世界。そら警察は王様になるわ・・・

 後半ではなぜ国賠訴訟で勝つのが難しいのか、またどうやって弁護士たちは勝てたのかというのことを順序たてて説明されています。そしてなぜ、遺族たちは勝率が一割にも満たない国賠訴訟にすべてをかけるしかないのかも怒りと疑念をこめて描かれています。