ノンフィクションと評論書籍の感想を述べる

ノンフィクション・評論本に絞り実際に読んだ感想を述べていく

警察はなぜ堕落したのか  著者:黒木昭夫 評価:★★☆☆☆

 

警察はなぜ堕落したのか

警察はなぜ堕落したのか

 

 桶川ストーカー事件から栃木のリンチ殺人事件まで、相次ぐ警察の失態によって、何人もの死者が出てしまった。いずれも、警察の怠慢、住民の訴えへの無関心が原因だ。「キャリアの経歴にキズをつけてはいけない」という恐るべき独善的な論理、現場感覚を無視した官僚主義など、元警察庁巡査部長が事件の背後にある堕落の構造を解明する。

 

 【この本紹介】

  今回の本は元警察官であった著者が、栃木リンチ殺人事件や長野警察官拳銃不正使用事件などを例に出し、それらの事件の発生から逮捕まで警察がどのような思惑で何をしたかを時系列で説明し、後半では警察時代の実体験を踏まえ警察の組織構造や制度の問題点を解説していくといったものとなります。

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  栃木リンチや京都小学生殺人事件など、事件の中でもとりわけ警察のお粗末な捜査が目立った事件を取り上げていることもあり、読んでいて胸糞悪くなるほどの対応だらけです。いくら家族が訴えても無視、あげく家族に証拠を集めさせその証拠も無視。とどめにリンチ監禁容疑の家に警察と名乗って電話、その結果警察に感づかれたと恐れた犯人による被害者口封じ殺人とか笑えません。

 ただしそれぞれの事件について30ページ程度でまとめられているため、事件について詳しく知りたいという方は、それぞれの事件を詳しく取り扱った同著者の本を読んだがよいと思います

 

 

栃木リンチ殺人事件―警察はなぜ動かなかったのか

栃木リンチ殺人事件―警察はなぜ動かなかったのか

 

 

 【主観的な文章が強い?】

「黒木昭雄」の画像検索結果

 後半からは著者の実体験を踏まえた警察の昇進制度の問題点や新人警察官がどのように洗脳され不祥事のデパートの従業員になっていくかを語っています。

 後半の感想を語る前に著者がなぜ元警察官になったかを語る必要があります。著者は警察官として従事する中で同僚上司による嫌がらせにより暴力警察官として認定され左遷。その後趣味の合う同僚警察官たちとつくったヨットのマリンクラブを巡り上層部から圧力・監禁・尾行をかけられ、我慢の限界に達し退職といったものです。

 

 そのため本人は警察官であった時代は誇りであった、と語っていますが、どう読んでも文章のそこらじゅうから恨みや憎悪が感じられます。元警察官ということもあり、警察に関する文章が主観的になっていることも感情が感じられる起因になっています。

「警察 昇進」の画像検索結果

 そのため昇任制度で問題としている「昇進するには現場実績でなくペーパーテストの結果しか考慮されない」ことを取り上げ、そのようにペーパーテストばかりやっている警察官を「頭デッカチのモヤシ捜査官」と卑下しています。

 また新人教育の中で身辺調査の中で恋人のことを記載しなかったために警察学校を辞めさせられた同僚について異常な不適格人の洗い出しと批判していますが、その後の「仮採用であっても警察官である以上、何か起こせば元警察官といわれるんだ・・」と教官が話していることからもわかるとおり、そら書かないといかんだろと。

 警察の知り合いから情報聞き出して犯罪に利用する、またその知り合いにわざと嘘の情報流して捜査をかく乱するといったことは十分予想されます。そんな映画もあったなあ・・

 

 確かに警察組織の腐敗構造の原因を知るにはいい著書なんですが、いかんせん感情が見え隠れしているのがマイナスです。でも一番の闇はこの人、原因不明の自殺を遂げているという・・・

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ブログとして方向性の転換を決定しました

 これまでこのブログではジャンルを問わず書籍・映画を紹介してきました。しかしあまりにもジャンルを選ばなかったためカテゴリがごちゃごちゃしていたことや、方向性がないため記事を作りにくかったことがありました。

 そのためノンフィクション・評論の書籍に絞って今後は解説します。そのジャンルの過去記事は残しますが、それ以外のジャンル・映画はすべて消去しました。

神戸大学院生リンチ殺人事件 警察はなぜ凶行を止めなかったのか 著者:黒木 昭雄  評価:★★★★★

 

神戸大学院生リンチ殺人事件―警察はなぜ凶行を止めなかったのか

神戸大学院生リンチ殺人事件―警察はなぜ凶行を止めなかったのか

 

  2002年3月4日未明、神戸市西区の団地敷地内で、当時27歳の神戸商船大学院生が、まったくの言いがかりから暴力団員たちに暴行を受け拉致される。通報で現場に駆けつけた警察官たちは、なぜか被害者を捜索せず、暴力団員に言われるがままに引き上げていく。

 その後延々と続いた凄惨な暴行の果てに、被害者は生命を絶たれたのだった。明らかな異状を目の前にしながら、警察はなぜ何もしなかったのか。納得できない被害者の母親は、やがて警察の責任を求めて国家賠償請求訴訟を起こした。そして2006年1月、最高裁によって警察の非が全面的に認められる。警察を相手取る国賠訴訟は決して勝てないと言われてきたが、それを覆す初めての画期的な判断だった。本書は元警察官の視点で事件を克明に検証し、その全容を明らかにするものである。

 

 

【この本の紹介】

 まず「神戸大学院生リンチ殺人事件」とは何か。2002年に神戸市において山口系暴力組の佐藤という男とその組員により大学院生がリンチに遭い殺された事件であり、国賠訴訟において警察側が敗訴となった稀有な例として有名な事件です。事件の詳しい内容は本書を読むか、特集したページがあるので検索してください。

 

 この書籍において触れられているのは事件の経緯。そしてこの事件において警察が犯し続けたミス・隠蔽の数々。その後国賠訴訟内において、弁護士側がどのように戦い、勝訴したかを描いています。

 前回の「沖方丁こち留」紹介記事の中で「神奈川県警とか不祥事のデパートといわれいますが、まだ不祥事がばれるだけ警察の中では透明な組織です」という宇多丸のシネマハスラー回で紹介された発言を挙げました。実はその後にもう一つ発言があり「地方警察ではこのような不正が横行している」という発言もありました。今回のはまさにそれです。

 「君らなんで警察官やってるの?もうそのバッジおいて封筒張りでもやってて。」といいたくなるくらいに警察の行動がひどいです。この書籍内において、警察として最低限の義務を果たした警察官は、遺族を支えた吉永警部くらいです。あとの警察官がやったのは

 ①犯人をみすみす取り逃がす

 ②数多くの通報を全力で無視

 ③現場周辺の捜索を一切やらない

 ④ヤクザにおべっかつかって警察官を全く動員しない

 ⑤パトカーに乗り込んで助けを求めた被害者を襲うヤクザにへこへこ

 

 あくまで上記は一部です。そしてこれだけのことをしても国賠訴訟では勝てないというのが恐ろしい世界。そら警察は王様になるわ・・・

 後半ではなぜ国賠訴訟で勝つのが難しいのか、またどうやって弁護士たちは勝てたのかというのことを順序たてて説明されています。そしてなぜ、遺族たちは勝率が一割にも満たない国賠訴訟にすべてをかけるしかないのかも怒りと疑念をこめて描かれています。

 冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場  評価:★★★★☆   

 

冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場

冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場

 

 

2015年8月、各マスコミがいっせいに報じた人気作家、まさかの「DV逮捕劇」。9日間にわたって渋谷警察署の留置場に閉じ込められたのち釈放、不起訴処分が下された。この体験を通じて、冲方氏が失望を禁じえなかったのが、世間の常識などいっさい通用しない警察、検察、裁判所の複雑怪奇な実態だ。誤認逮捕や冤罪を生み出しかねない「司法組織の悪しき体質」を変えるには?ベストセラー『天地明察』の作家が世に問う、日本の刑事司法の不条理な現実。

 

 【この本紹介】

 今回紹介するのは作家・脚本でおなじみの沖方丁さんが突然のDV事件で逮捕され、その後不起訴に至るまでを描いたノンフィクションエッセイです。まず「沖方丁って誰?」という方に説明しますと作家としては映画にもなった「天地明察」、SFライトノベルの黄金時代の始まりの「カオスレギオン」などを書いており、脚本としてはアニメ「蒼穹のファフナー」「ヒロイックエイジ」などを手がけています

 

 

天地明察

天地明察

 

 

 

 

 

蒼穹のファフナー Blu-ray BOX (初回限定生産版)

蒼穹のファフナー Blu-ray BOX (初回限定生産版)

 

  この蒼穹のファフナーの続編にあたる蒼穹のファフナーEXODUSの放送中にDV逮捕という報道がされました。そのため「あれ?これ今後のファフナーどうなるんだ?」とファンは戦々恐々としていました。結果無事に放送はされましたが

「沖方 DV」の画像検索結果

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 この本はそんな沖方丁がDVで逮捕→拘留→裁判→不起訴処分となるまでの内容を書いた本になります。

 まずこの本を読みたいという人の中には「沖方丁が実際にDVしたかどうか。その後どうしたのか」を知りたいという方も多いと思いますが、残念ながら最終的にどうなったのかは描かれていません。結局DVはあったのか、妻の訴えは何だったのか、その後この夫婦はどうしたのかは書かれていないんですね。なので不完全燃焼が否めません。

「沖方 DV」の画像検索結果

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 もともとこの人は夫婦関係においても香ばしい発言が多かった人ではあるので普段の夫婦生活がどうだったかはわかりませんが、本書を読む限りこのDV事件に関しては警察側の腐敗っぷりが招いた自作自演もしくは妻側のでっちあげということになります。

 妻が殴られた現場といったエントランスの映像は警察が回収してるし、前歯折れるほど殴られてるなら殴った手も裂傷くらいはあるでしょうし、それらをもって証拠不十分とし、警察側も後半明らかに態度を変えていますので。

 

 【沖方丁のDV事件の真相ではなく、警察・検事・裁判の腐敗を実体験で描いた本】

 エッセイということもあり一人称視点でこの本を描かれていますが、さすが作家というべきか読みやすい。本自体も文字がびっしりというわけでなく適度な余白があるので目が疲れない。

 そしてこの本はDV事件の真相よりも、取調・拘留を受けた間の警察官の横暴・腐敗きわまる扱い、そして裁判の問題点に重きを置いています。そのため最後のページでは映画「それでもボクはやってない」の監督との対談も描かれており、そこでは監督を交えての警察・検事の腐敗が語られています。

  「拘留所」の画像検索結果

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 特に拘留中の扱いはすさまじいものがあります。そら徹底的な自殺防止策を行うわと思うほど。ただその自殺防止策がますます精神的に追い込んでます。そうやって精神的に追い込んで「もう冤罪でもいいから認めてここから出たい」と罪を認めさせることも目的に一つだそうですが。

 この本は一人称視点であり警察・検事に対する恨みもあるのでしょうが、警察・検事の扱いは前面悪人です。褒めるところが最初から最後までありません。そのため警察・検事職につとめる人は発狂して本を破り捨てる可能性があるくらいです。でも「あ~わかるわ。きっとこの人上から圧力かけられて嫌々やってんだろうなぁ・・」とも感じるかもしれません。上層部に徹底的に圧力かけられて嫌々取調べしてる場面もあります。

 

 まとめとしては「警察・検事の現場での腐敗を一人称で描いた本」となります。事件の真相については不明なのでその点はあしからず。

 

 そういえばラジオ・シネマハスラーの「日本で一番悪いやつら」の回で宇多丸さんの知人がこんなことをいってたそうです。

 「神奈川県警とか不祥事のデパートといわれいますが、まだ不祥事がばれるだけ警察の中では透明な組織です」

  心に狂いが生じるとき 精神科医の症例報告  岩波 明  評価:★★☆☆☆

 

心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告 (新潮文庫)

心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告 (新潮文庫)

 

 最初は心の小さな狂いでも、それをきっかけに、普通の人間が精神全体を蝕まれてしまうことがあり、ときには取り返しのつかない行動をとることがある。しかし、正常な精神と狂気の境目はごく淡く、我々の社会はアルコール依存、統合失調症人格障害うつ病など様々な精神疾患とともにある。人は、いつ、いかにして心を病むのか。現役の臨床医師が、虚説を排して実態を報告する。

 

【この本の紹介】

 まずこの書籍はサイコパスについて扱った本ではなく、ごく身近にある精神病について実例を交えて解説した本になります。精神病にいたる流れも特殊な事例ではなく、生きていく中で自分たちもなり得るのだろうと感じてしまうほどたくさん見られる人生例の一つでした。

 章としては

 1章:アルコール依存症患者

 2章:被害妄想

 3章:被害妄想からの殺人例

 4章:摂食障害

 5章:ADHD

 6章:器質性精神病

 7章:日本における精神鑑定の遅れ

 8章:日本におけるうつ病の遅れ

 9章:日本社会における精神病患者への風当たり

 

 おおまかに訳するとこのような感じになります。私自身としては、精神病の具体的な解説と原因、そしてそれに対する対処についてみたかったのですが、この本はあくまでその人がどのような経緯で精神病を発症し、その後どのような治療をしたかという実例を書き連ねたものが大半になります。詳しい解説を見たいという人にははずれになる本かもしれません。

 また9章になると政治思想というか、筆者の政治に対する感情的な意見が入ってくるため、それに嫌なものを感じる人もいると思います。自分もそんな一人でした。

 

 まとめとしては、実例を知るにはいいがそこから精神病と日本の社会構造や対策などを知りたい人には物足りない本となります。

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から 著者:藤岡淳子 評価:★★☆☆☆

 

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から

非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から

 

 

 

非行を対人関係における暴力という枠組みでとらえ、非行臨床の現場における実践と、米国における新たな非行理論による理解とを武器に、今、非行少年に社会としてどう働きかけるかを模索した書。

 

【この本の紹介】

 この本は少年犯罪・少年院に携わった著者が薬物・性犯罪・売春、暴行・殺人などの各ジャンルごとの少年犯罪を実際に関わった少年少女を実例に出し、そこから各内容を分析していくといったものになります。

 では大まかな感想についてですが「専門書としては役に立つが、楽しむための書物としては全くつまらない」ということです。上記にも記したようにこの本は実際に関わった実例を元に分析が行われます。また実例も一つだけでなく複数示されるため、分析が一方向に偏らないものになっています。実例が一つだけだとどうしても信憑性に欠ける部分が出てきてしまうのですが、その点は非常に優秀です。

 そして最終章では少年が非行に進む原因を生物学・精神学・社会学の各視点から分析され、その過程では他の研究者の研究も引用されているので、この本を元に他の研究内容を詳しく調べ、この本から派生させることも出来ます。最後には現在の非行少年に対する社会的措置と対処の効果の是非と改善点が挙げられます。

 まとめとしては、この分野を学びたい・研究しており詳しい文書・研究実績を把握したいという人とっては優秀な専門書です。でも読書として読むには内容が堅いですね

万引き老人  評価:★★★★☆

 

万引き老人

万引き老人

 
老後貧困、貧困老人といった言葉が流布する現代社会。高齢者世代の「困窮」は、万引きの現場に目を移すとその輪郭をハッキリと現す。万引きに走る原因は収入、貯蓄の不足、無収入といった金銭的な困窮はもちろんだが、孤独感や疎遠な家族関係といった心の寂しさ、肉体的な病気や心の病などの苦しみから物を盗む老人が急増している。捕まえて話を聞くと、それぞれが抱える身の上話に思わず同情することもあれば、あまりの身勝手さに怒りに打ち震えることも。凄腕万引きGメンが明かす老人万引き「現代ニッポン孤独な心」の現場リポート。

 

 

 

 前回は爽やかさやほろ苦さをにおわせる青春小説をレビューしましたが、今回はほろ苦さも爽やかさもない全く救われないルポタージュ本です。

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 これは保安員という、世間一般では万引きGメンといわれる万引き犯の発見・対処を外部委託された筆者が実際に確保した高齢万引き犯の実態を体験談で語っていくというものです。

 昨今高齢者による万引きが大きな問題になっています。それは貧困故に食べるものに困りというものもあれば、ホームレス生活が嫌なで衣食住が確保されている刑務所に行きたくて、比較的簡単に出来て罪悪感もない万引きを繰り返すといったものもあります。他人との繋がりを持ちたくて万引きする人もいるから世も末です。

 この本でもそれらのような万引き犯が何をどのような手口で盗んだのか、また犯行がばれた末にどのような行動をとったかということが解説されますが、それを読んだ感想としては「こいつら同情の余地かけらもわかねえ」です。やりなれた土下座、「警察に突き出すなんて、俺を飢え死にさせる気か!」と怒鳴り散らす、ぼけた振りをして責任能力を回避しようとする、うん、何が弱者だ

 警察も立場を持った人間の万引きであれば喜んで逮捕しますが、貧困層の小額万引きでは立件も難しく、処理も面倒なので厳重注意で終わらせます。万引き犯たちも警察に突き出されたところで大して罪に問われないことを知っているため何度でも繰り返されます。泥沼ですね

 バイトであれ接客・サービス業に携わった人間であれば、この本を読んで同情できる人は仏の心を持った方だと思います。

 この本はなぜ高齢者が万引きをするほど貧困になったとか、その裏に潜む社会の闇に触れた作品というわけではありません。解説本でなくノンフィクション本であるため「このようなことがフィクションでなく、当たり前のように横行している」という事実を知る意味では良い本だと思います。本当に犯行の動機や背景が十人十色です。

 ただ実体験がメインで、そこまでの動機や社会的問題についてはあまり触れられていなかったため、その辺りでマイナス1になってます。